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大阪地方裁判所 昭和51年(ワ)2097号 判決

原告

大欧株式会社

右代表者

千原武

右訴訟代理人

徳矢卓史

徳矢典子

布施裕

被告

岩谷産業株式会社

右代表者

岩谷直治

右訴訟代理人

畑良武

丸山和也

中迫廣

疋田淳

岩本洋子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一原告が輸入婦人服地の販売を業とする会社であることは、〈証拠〉によりこれを認めることができ、これに反する証拠はない。

二次に、本件紛争の概要について判断する。

〈証拠〉を総合すれば、次の事実を認めることができ、〈反証排斥略〉、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。

1  原告は、昭和四七年ころ設立され、設立後間もない同年一二月四日、婦人服地のメーカーである訴外会社との間で、原告は訴外会社の手数料による総代理店(ソール・エイジェンシー)になる旨、訴外会社は原告に対し原則として訴外会社の作成した原告への全送り状の合計金額の五パーセントの手数料を支払う旨及び原告は紛争(例えば、客側からの不当な取消し又は支払の不履行)の解消のため訴外会社を代行して大阪の裁判所に提訴する資格がある旨の代理店(エイジェンシー)契約を締結した。また、原告は、そのころ、フランスのギグー社その他の外国の婦人服地メーカー数社との間でも右と同様の契約を締結した。

2  原告と右代理店契約を締結した訴外会社など外国の婦人服地メーカーが日本の顧客に対して製品を販売するには、必ず原告を通すことを要するものとされ、日本の顧客が海外でメーカーと直接に交渉して製品を購入する場合であつても、メーカーは、原告の同意がなければ、製品を販売することができなかつた。そして、原告が外国のメーカーの代理店として販売活動を行い、そのメーカーの製品の購入を希望する日本の顧客との間に取引が成立した場合、原告は、代金の支払及び製品の引渡しには関与せず、買主である日本の顧客が、メーカーを受益者とする信用状を開設し又は現金を送付してメーカーに代金を支払い、メーカーから製品の引渡しを受けていた。そして、右の場合、原告は、メーカーから手数料の支払を受けていた。

他方、原告は、自ら、自己が代理店契約を締結している訴外会社その他の外国のメーカーからその製品を買い受け、これを日本の婦人服地卸売業者等に販売することもあり、この場合には、原告が、自ら、信用状を開設し又は現金を送付してメーカーに代金を支払い、メーカーから製品の引渡しを受けていた。そして、この場合には、原告は、メーカーからの手数料の支払は受けなかつた。

3  ところで、出崎が代表者として経営するロイアルクイン株式会社(以下「ロイアルクイン」という。)は、外国製婦人服地の卸売業を営んでいたが、自ら銀行に信用状を開設するだけの信用がなく、外国のメーカーから直接に婦人服地を輸入することができなかつた。そこで、ロイアルクインは、その購入を希望する外国製婦人服地を被告に輸入してもらつて被告から買い受けることとし、昭和四八年七月二三日、ロイアルクインと被告とは、被告がロイアルクインの購入を希望する外国製婦人服地をロイアルクインに代わつて外国のメーカーから買い付けて輸入しロイアルクイソに売り渡すことについて基本契約を締結し、売主を被告、買主をロイアルクインとする商品売買基本契約書(乙第一号証)を作成した。右書面には、被告とロイアルクインとは継続して被告の取り扱う商品を売買するため基本契約を締結した旨、被告とロイアルクインとの間の個別的売買契約は、その都度被告がロイアルクインに売買約定書を発行しロイアルクインがこの売買約定書に記名捺印した上被告に交付することによつて成立するものとするが、都合により売買約定書の発行に時間を要する場合においては、被告がロイアルクインに表示した価格その他取引条件について、ロイアルクインが合意したとき、被告は、被告がロイアルクインに対して発行した注文確認書等により右売買約定書による個別的契約が締結されたものとして処理することができる旨、品質検査は被告の買付先積出港検査をもつて最終とし、数量検査は被告の買付先積出港検査又は右両者の合意による検査機関の検査をもつて最終とし、売買商品の品質が最終の品質検査証と相違し、又は数量が最終の数量検査証と相違した場合といえども、被告はその責任を負わない旨、及び商品の所有権は特約のある場合を除き商品の受渡しがあつたときに被告からロイアルクインに移転する旨記載されていた。そして、被告とロイアルクインとは、右書面作成のころ、被告のロイアルクインに対する与信限度額を五〇〇〇万円以内とする旨合意した。

4  そして、ロイアルクインは、被告との右商品売買基本契約に基づき、昭和四九年秋冬物の外国製婦人服地を被告に輸入してもらつて購入したが、その購入の方法は、例えばフランスのギグー社製婦人服地についてみれば、次のとおりであつた。

ロイアルクインは、昭和四八年一〇月ころから、被告の担当社員である斎藤徹(以下「斎藤」という。)とともに、ギグー社の日本における代理店である原告と交渉し、購入を希望する婦人服地について、ロイアルクインにおいてその種類及び数量を指定した上、その価格のほか輸入及び代金決済は被告が行うことなどの取引条件を取り決めた。そして、原告は、右交渉結果に基づき、発注者をロイアルクイン、代金支払者を被告と表示し、ロイアルクインが購入を希望する婦人服地の種類、数量、価額等を記載したギグー社あての注文書(甲第八号証、第一〇号証、乙第二号証の三)を作成し、これをギグー社及び被告に送付した。これに対し、ギグー社は、被告を輸入者と表示したロイアルクインあての注文確認書(甲第九号証の一、二、第一一号証)を作成し、これを原告に送付した。そして、被告は、ロイアルクインがその購入を希望する婦人服地の種類及び数量を最終的に確定した後である昭和四九年二月二一日、商品の受渡場所は買主の事務所とする旨、支払条件は商品納入日から起算して一八〇日以内の日を満期とするロイアルクイン振出の約束手形で決済する(ただし、関税は、別途現金払いとする。)旨、検査条件は積出地検査をもつて最終とする旨、買主の売主に対する決済金額は商品に対するシッパーズインボイス金額をT/R時先物予約レート換算に1.32倍し、関税実費を加算したものとする旨、及び売主は品質、数量については一切責任を負わず、輸入業務のみを行うものとする旨を記載した、売主を被告、買主をロイアルクインとする輸入商品売買約定書(乙第二号証の一、二)を作成し、これに原告から送付を受けたギグー社あての前記注文書を添付してロイアルクインに交付し、これに対し、ロイアルクインは、右輸入商品売買約定書の買主欄にロイアルクイン代表取締役出崎治男の記名捺印をし、これを被告に交付した。そこで、被告は、その後、三和銀行に受益者をギグー社とする商業信用状を開設してギグー社に対し右婦人服地の代金を支払い、ギグー社から右婦人服地の引渡しを受け、同年八月ころ、これをロイアルクインに引き渡した。

そして、ロイアルクインが購入を希望したギグー社以外の外国のメーカーからの昭和四九年秋冬物婦人服地の輸入も、右ギグー社の場合と同様にして行われた。

5  訴外会社の代表者であるセン・ハーバート(以下「セン」という。)は、昭和四九年二月ころ、訴外会社製の昭和五〇年春夏物婦人服地の販売のため来日し、昭和四九年二月二七日、センの大阪における宿泊先のホテルにおいて、原告の取締役である茨木賢一郎(以下「茨木」という。)の紹介で、被告の担当社員である斎藤及びロイアルクインの代表者である出崎と会い、訴外会社製の婦人服地について見本を示して説明したところ、出崎は、右見本により、ロイアルクインにおいて別紙注文明細表一記載のとおりの品質、柄、色及び数量の訴外会社製婦人服地を購入することを希望した。そこで、セン、茨木、出崎及び斎藤の四人で話し合い、訴外会社がロイアルクインの購入を希望する右婦人服地を製造し、被告がこれを訴外会社から輸入し代金を決済すること、船積時期は同年九月末ころとすること等を合意した。そして、センは、直ちに、右合意に基づき、ロイアルクインが購入を希望する右婦人服地の明細を記載したロイアルクインあての文書(甲第一号証)を作成した。

6  そこで、原告は、昭和四九年二月二七日、右合意をうけて、注文者をロイアルクイン、代金支払者を被告と表示し、ロイアルクインの購入を希望する婦人服地の明細を記載した訴外会社あての注文書(甲第二号証の一、二)を作成し、これを訴外会社及び被告に送付したが、ロイアルクインには送付しなかつた。

右注文書に対し、訴外会社は、同年三月一三日、原告経由のロイアルクインの注文である旨及び支払は被告経由のスイスフランの商業信用状でする旨記載したロイアルクインあての注文確認書(甲第三号証)を作成し、これを原告に送付し、原告は、これを被告及びロイアルクインに送付した。

なお、右取引について原、被告間の関係を直接に定める書面は作成されなかつた。

7  ロイアルクインは、昭和四九年六月二七日、前記訴外会社製昭和五〇年春夏物婦人服地について、前記5の合意の際一部未定であつた色を決定するとともに、注文の追加及び一部取消しをすることにし、その旨記載した原告あての注文書(甲第四号証)を作成し、これを原告に送付した。原告は、同日、右注文書に基づき、前記6の注文書((甲第二号証の一、二)と同じ形式の、注文内容を別紙注文明細表二記載のとおりとする訂正注文書(甲第五号証)を作成し、これを訴外会社及び被告に送付した。これに対し、訴外会社は、同年七月二日、右注文の訂正を承認するとともに右注文内容を確認する旨の前記6の注文確認書(甲第三号証)と同じ形式の注文確認書(甲第六号証)を作成し、これを原告に送付し、原告は、そのころ、これを被告及びロイアルクインに送付した。そして、訴外会社は、原告に右注文確認書を送付した直後から、右注文にかかる婦人服地の製造を開始し、同年九月ころ、これを完成した。

8  ところが、ロイアルクインは、昭和四九年六月ころ、前記ギグー社製昭和四九年秋冬物婦人服地の取引に関し、被告との間に取り交わした前記輸入商品売買約定書(乙第二号証の一、二)に定められた支払条件に反し、被告から商品の引渡しを受けた日から一八〇日以上先の日を満期とする約束手形を振り出して被告に交付し、更に、被告に対し、昭和五〇年春夏物婦人服地の取引についても、右と同様の手形で決済することを求め、そのため、ロイアルクインと被告との間で本件取引の支払条件について合意が成立しなかつた。そのため、被告は、ロイアルクインが購入を希望している別紙注文明細表二記載の訴外会社製婦人服地(本件商品)についてロイアルクインとの間に前記商品売買基本契約書所定の売買約定書を作成せず、昭和四九年七月二日ころから数回にわたり原告から訴外会社を受益者とする商業信用状を開設するよう求められても、これに応じなかつた。

9  被告は、その後もロイアルクインとの間で本件商品の取引の支払条件について交渉を続けたが、合意が成立せず、昭和四九年一〇月一日ころ、遂に、右取引を行うことは困難であると判断し、被告の外国部長友田元成及び斎藤からロイアルクインに対しその旨伝え、更に、同年一〇月五日ころ、外国部長友田元成の名前で、ロイアルクインあてに、ロイアルクインの希望する支払条件では取引に応じられないので、被告は本件商品についての商業信用状の代理開設を辞退する旨記載した書面(乙第三号証)を作成して送付した。

三右事実を前提にして、主位的請求の当否について判断する。

1  原告は、原告が訴外会社のいわゆる総代理店であつて、訴外会社との関係では代理商にあたり、第三者との関係では問屋にあたるもの(いわゆる問屋代理商)であり、本件商品の売主は原告である旨主張するので、まず、この点について検討する。

原告が、昭和四七年一二月四日訴外会社との間に原告が訴外会社の総代理店(ソール・エイジェンシー)になる旨の代理店契約を締結したことは、前記認定のとおりである。しかしながら、「エイジェンシー」という概念は、他人のために現実に行動する者を意味する英米法上の概念であり、日本法における代理商、問屋、仲立等をすべて包含する概念であるから、原告が訴外会社のエイジェンシーであることをもつて、直ちに原告の法的地位を確定することはできず、原告が第三者との関係で問屋に当るか否かは、取引の実体に即して判断しなければならない。

そこで検討するに、前記認定のように、原告と訴外会社とは、右代理店契約において、原告は手数料による代理店であつて、訴外会社は原告に販売金額に応じて手数料を支払う旨約していること、原告が訴外会社の代理店として販売活動を行い、訴外会社の製品の購入を希望する日本の顧客との間に取引が成立した場合、代金の支払及び製品の受渡しは顧客と訴外会社との間で行われ、原告はこれに関与しないこと、他方、原告は、自ら訴外会社からその製品を買い受け、これを他に販売することがあり、その場合には、自ら代金の支払をし、製品の引渡しを受け、訴外会社から右代理店契約で定める手数料の支払を受けることはなかつたこと、本件商品の売買については、その代金の支払及び商品の受渡しは原告が訴外会社との間でするのではなく、被告が訴外会社に対して代金を支払い、被告が訴外会社から商品の引渡しを受ける旨合意されていること、以上の事実を総合勘案すれば、本件商品の売買については、原告は、訴外会社の媒介代理商の立場に立つものであつて、売買の当事者ではなく、本件商品の売主は、訴外会社であると認めるのが相当である。そして、原告が本件商品の売買に関し前記認定のように注文書を作成して訴外会社及び被告に送付したり、訴外会社から注文確認書の送付を受けてこれを被告及びロイアルクインに送付したりしていることは、原告が訴外会社の媒介代理商であることとなんら矛盾せず、むしろ、原告が訴外会社の媒介代理商として行動したことを物語るものといえる。また、前記認定のとおり、原告と訴外会社とは、前記代理店契約において、原告は紛争(例えば、客側からの不当な取消し又は支払の不履行)の解決のため訴外会社を代行して大阪の裁判所に提訴する資格がある旨約しているが、原告が訴外会社の代理店として販売活動をして日本の顧客との間に取引を成立させた場合に原告が売主の立場に立つのであれば、顧客の契約不履行について原告が日本の裁判所に提訴することができることは当然のことであつて、わざわざ右のような約定をする必要はないのであるから、右約定は、むしろ、右の場合には訴外会社が顧客と契約関係に立ち、顧客に対し売主としての権利を有することを前提として、原告にその権利を裁判上代位行使することを委ねたもの、すなわち、いわゆる訴訟信託に関する合意であると解するのが相当であり、なんら前記認定判断を左右するものではない。

そして、〈証拠〉中右認定判断に抵触する部分は採用することができず、他に右認定判断を左右するに足りる証拠はない。

2  そこで、次に、本件商品の訴外会社からの買主がだれであるかについて検討する。

前記認定のように、ロイアルクインは、自ら銀行に信用状を開設するだけの信用がなく、その購入を希望する外国製婦人服地を直接にそのメーカーから輸入することができなかつたところから、ロイアルクインが購入を希望する外国製婦人服地を被告にロイアルクインに代わつて輸入してもらい、これを被告から買い受けることとし、これについて、昭和四八年七月二三日、被告との間に、商品売買基本契約を締結したのであるが、右基本契約締結と同時に作成された商品売買基本契約書によれば、被告とロイアルクインとの取引関係は被告が輸入した商品の売買関係としてとらえられ、右商品の所有権は、特約のある場合を除き、商品の受渡しのあつたときに被告からロイアルクインに移転するものとされ、それまでは被告に留保されている。そして、右の点からすれば、被告は右基本契約により、単にロイアルクインが外国製婦人服地をそのメーカーから輸入するについて輸入業務を代行することを引き受けたのではなく、ロイアルクインが購入を希望する外国製婦人服地をそのメーカーからロイアルクインに代わつて自ら買い付けて輸入し、これをロイアルクインに売り渡すことを約したものと解するのが相当である。そして、このことと、本件商品の売買についても、被告とロイアルクインとの間に右基本契約が存することを前提として、ロイアルクインが購入を希望した婦人服地について、被告の担当社員斎藤が、訴外会社の代表者セン及び訴外会社の代理店である原告の取締役茨木との話合いにより、被告が訴外会社からこれを輸入し、被告が訴外会社に対しその代金を決済する旨合意していることとを併せ考えれば、本件商品の訴外会社からの買主は被告であり、被告は、ロイアルクインの注文に基づき、その購入を希望する本件商品をロイアルクインに代わつて訴外会社から買い付け輸入したものと認めるのが相当である。

もつとも、前記認定のように、本件商品の品質、柄、色及び数量の決定並びにその訂正はロイアルクインがしており、また、本件商品の売買に関して原告が作成した前記注文書(甲第二号証の一、二、第五号証)及び訴外会社が作成した前記注文確認書(甲第三号証、第六号証)には、ロイアルクインが注文者として表示され、被告は代金決済者として表示されているにすぎないが、これらの事実は、むしろ、被告がロイアルクインの注文に基づきその購入を希望する本件商品を訴外会社から買い付け輸入したことを示すものとみることができ、本件商品の買主を被告と認定する妨げとなるものではない。また、前記認定のように、ロイアルクインと被告との間に作成された前記商品売買基本契約書は、被告が輸入してロイアルクインに売り渡す商品については、品質検査は被告の買付先積出港検査をもつて最終とし、数量検査は被告の買付先積出港検査又は右両者の合意による検査機関の検査をもつて最終とし、商品の品質が最終の品質検査証と相違し、又はその数量が最終の数量検査証と相違した場合といえども、被告はその責任を負わないと定めているが、これは、被告がロイアルクインの注文に基づきその購入を希望する外国製婦人服地をそのメーカーから買い付け輸入するものであるところから、その輸入した婦人服地をロイアルクインに売り渡すについて被告の担保責任を免除したものと解され、これまた本件商品の買主を被告と認定する妨げとなるものではない。更に、前記認定のように、前記商品売買基本契約書は、個別的売買契約は原則として売買約定書の発行がなければ成立しない旨定めており、これは、被告とロイアルクインとの間に売買約定書が作成されて売買契約が成立しなければ、被告はロイアルクインの購入を希望する外国製婦人服地をそのメーカーから買い付け輸入することもしない趣旨をも含むものと解されるところ、本件商品については被告とロイアルクインとの間に売買約定書は作成されなかつたのであるが、右商品売買基本契約書の約定は、被告とロイアルクインとの間の約定であつて、訴外会社に対して効力を及ぼすものではないから、被告とロイアルクインとの間に本件商品について売買約定書が作成されなかつたからといつて、直ちに被告と訴外会社との間に本件商品について売買契約が成立していないということはできない。そして、本件においては、前記認定のように、被告は、その担当社員斎藤が昭和四九年二月二七日訴外会社の代表者セン及び訴外会社の代理店である原告の取締役茨木に対しロイアルクインの購入を希望する訴外会社製婦人服地を被告が買い付けて輸入し、代金を決済する旨約し、また、その後間もなく、原告から注文内容を記載した原告作成の注文書及び右注文内容を確認する訴外会社作成の注文確認書を送付され、更に、同年六月末から七月初めにかけて、原告から最終的に確定した注文内容を記載した原告作成の注文書及び右注文内容を確認した訴外会社作成の注文確認書を送付されたが、なんらの異議も述べず、他方、訴外会社は同年七月初めころ本件商品の製造を開始しているのであり、右経緯にかんがみれば、同年七月初めには訴外会社と被告との間に本件商品について売買契約が成立したものとみるのが相当である。

そして、〈証拠〉中右認定に反する部分は採用せず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  そうすると、本件商品の売買契約は訴外会社と被告との間で締結されたものであり、原告は本件商品の売主ではないことになるから、原告が本件商品の売主であることを前提とする主位的請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がない。〈以下、省略〉

(石井健吾 平澤雄二 森一岳)

注文明細表一、二〈省略〉

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